塗料の試験は、工場で生産された塗料が安定した塗料であり、使用するまでの間、一定の状態を保っており、それを塗装する場合に適正のある塗料であるかを確認することを目的とするものです。
① 容器の中での状態:JIS K5600-1-1
塗料の入っている缶などの容器を開けたとき、表面に皮がはっていたり、塊があったり、顔料が分離して色分かれしていないか、また色分かれしていてもかき混ぜ程度で容易に一様な状態になるかを確認するために行う試験となります。
塗料の性状を知る第1歩であり、また重要な試験でありながら容易に現場などで塗料使用時に確認できる試験方法です。
②粘度:JIS K5600-2-2
塗料のねばり度合いをいい、粘ちゅう度ともいいます。
粘度には様々な性質があり、塗料の作業性、仕上がり性、貯蔵安定性などに対して、最も重要な塗料の性状です。
塗料の粘度には、その塗料に力を加えると粘度が急に低くなり、また、力を取り除くと粘度が回復し高くなるチキソトロピックという性状とか、逆に力を加えると粘度が高くなり、力を除くと粘度が低くなるダイラタンシーといわれる性状があります。
これらの粘度の性状の違いは塗装作業性に関して、チキソトロピーは、はけさばきが軽く、ダレが生じ難いがはけ目が残りやすい特徴があります。
ダイラタンシーは、はけさばきが重くてダレやすいが、はけ目の少ない仕上がりが得られます。一般塗料の粘度測定には、ストーマー粘度計が用いられ、その数値はKU値で表されます。エアスプレーなどで塗装する粘度の低い塗料は、フローカップが用いられ、その数値は秒で表されます。
一方、外装材など粘度が極端に高い塗料はB型粘度計が使用され、その数値はポイズ(P)やセンチポイズ(cP)で表されます。
粘度は測定する温度の影響を受け、温度が高いと粘度は低くなり、温度が低いと高くなる。このため、規格での測定温度は液温25±0.5℃に決められています。
③密度(比重):JIS K5600-2-4
塗料の密度は、塗料の成分が配合通りに生産されているかどうかを確認する数値であり、塗装面積における塗付け量から理論膜厚を算出する場合に必要になってきます。
一般的には容量(L)を重量(㎏)に直す場合に用いられます。塗料の密度は、一般に顔料分を多く含む塗料や、不揮発分の多い塗料は密度が高くなります。
密度の測定は、精度の良い測定にはガラス比重瓶が用いられ、工場での工程管理では金属製比重瓶(比重カップ)が用いられます。
④分散度(つぶ):JlS K5600-2-5
塗料に配合されている顔料が目的通りに分散されているかを確認する試験です。
分散度の試験はつぶゲージを用いるが、分散の程度によりゲージが異なります。建築用塗料は分散度が比較的大きく、0~100μmのゲージを用います。
ゲージの中央に連続した溝が掘られており、溝の深い部分に試料を置き、スクレーパーでしごき、直ちにつぶの見える位置の数値を読み取ります。
この数値が、分散度(つぶ)となります。
⑤貯蔵安定性:JIS K5600-2-7
塗料の中には貯蔵中に粘度が上昇したり、皮張り、ゲル化や顔料の著しい沈殿などを生じるものがあり、これらの塗料を塗装すると作業性が悪いばかりではなく,使用できない状態になってしまいます。
常温貯蔵安定性は,一定期間貯蔵してから塗料状態を検査するし,加温安定性は温度35℃で3ヶ月間保存した後、常温に戻し塗料状態を検査します。
⑥低温安定性:JISK5600-2-7
合成樹脂エマルション塗料のように水で希釈する塗料は、低温時になると凍結したり、固まったりして変質することがあり、寒冷地などでの冬の保管を考慮し、試験します。
試験は、-5±2℃で18時間放置後、室温に6時間放置を1サイクルとして、この操作を3サイクル行い、塗料状態を検査します。
⑦その他塗料状態での試験 希釈性:
うすめ液(シンナー)が所定の塗料を溶解する性能が有るかどうかを調べるもので、塗料中に所定のうすめ液を加え、塗料をガラス板に塗付して出来た塗膜の表面状態で、光沢が正常で、しわ・むら・つぶ・あわなどが著しく発生していなければ希釈性は正常と判断します。
塗料状態の試験としては、ペイントやワニスに使用するバインダーの透明度を評価する色数の測定や、2液形塗料など主剤と硬化剤を混合した後などの使用可能時間(可使時間:ポットライフ)を測定する試験があります。
特に可使時間(ポットライフ)は多液形塗料を使用するうえでは重要な項目です。
塗料を塗装する場合に要求される性質として、いかに美しく、均一に塗装できるかを知るために塗装作業者の技能が第1ですが、塗料自体各々の塗装方法に適した塗料であるかを知る方法として作業性があります。
①塗装作業性:JISK5600-1-1
この試験は、各塗料に定められている塗装方法、例えば、はけ塗り・吹付け塗りなどの方法によって、規定された条件で定められた試験板に塗装して、作業に支障があるかどうかを調べる試験です。
この場合、1回塗りと2回塗りについても塗装し、それぞれにおける作業性を調べます。
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